DAZZLE第八回公演『二重ノ裁ク者』を観てきました
2014年2月14日に東京芸術劇場プレイハウスで上演されたDAZZLE第八回公演『二重ノ裁ク者』の初日を観てきました。
私がDAZZLEの公演を観るようになったのは2012年4月の第六回公演『花ト囮』(再演)からですが、今回は今まで観たDAZZLEの単独公演の中で最も規模が大きい劇場での公演で、重厚そうなタイトル、ストーリーも相まってどんな舞台になるか楽しみに観に行きました。
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知らない方のために・・・DAZZLEとは?
「すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ」をスローガンに掲げ、比類ない世界観を持ち、独創性に富んだ作品を生み出し続けるダンスカンパニー。
ダンスにおいてはストリートダンスとコンテンポラリーダンスを融合させた、世界で唯一のオリジナルダンススタイルを創造。
舞台作品においては映像によるテキストで物語を紡ぎだす。
これは2011年4月に行われたDAZZLEの第5回公演『Re:d』のトレイラーです。セリフはありませんが舞台奥のスクリーンに映し出される字幕や映像、ナレーションに合わせてダンサーが演技をしたり、小道具を使ったりとダンスだけではない演劇的な要素も入った舞台を繰り広げているのがDAZZLEです。
尽きること無く洗練されていく表現、より芸術性が高まったダンス舞台
東京芸術劇場プレイハウスに入るのは初めてでしたが、とても落ち着いた格式高い雰囲気の劇場で、数は少ないですが今まで行った劇場とは明らかに「違う!」感じがしました。
今回のストーリーは独裁国家が舞台。人口増加と食料、資源枯渇の危機に直面した国に現れた独裁者は50歳になったら死ななければならない「貢献」という制度を導入し、「貢献」できない人々は迫害され、やがて捕らえられ処刑されるようになります。
「貢献」制度により国家の危機は乗り越えたものの、独裁者が50歳を迎えようとする中、独裁者の子の父(独裁者)との関係や教師との関係における葛藤が描かれます。
席につくと場内には「パチパチパチ・・・」とタイプライターの音が鳴り続け、開演時間になり場内が暗くなったのですが、これがものすごく暗い。舞台上の照明が際立って見えます。広い舞台を照明の光で区切ることで場面の変化をもたらしストーリーが展開していきます。
今までの公演だとオープニングはストーリーの導入とともにダンスをガツンと魅せてくる感じなのですが、今回のオープニングは躍動感あるパフォーマンスを魅せつつストーリーがより伝わってくる感じの流れでストーリーの世界に一気に惹きこまれました。
前半は上記のストーリーにあるような世界が重い感じで描かれていき、後半はストーリーの核心に向けてスピード感をもって展開していきます。
重い雰囲気の中にもコミカルな表現をする部分もあり、酒宴の場面で酒瓶を持って踊ったり、酒瓶を叩いて音楽を演奏したり、収容所でシャワーシーンがあったりと今まで見た作品に無い感じの場面があって面白かったです。
もっとも、両場面とも直後に人が死ぬので、そのあたりの表現の落差もこの作品の特徴といえるでしょう。
DAZZLEの魅せどころである小道具ですが、今回は種類も多く、もはやダンスと小道具のデパートか総合商社といったところではないでしょうか。
机、椅子、本、額縁、瓶など過去の作品に登場したものが多いのですが、使い方や魅せ方が洗練されて今までと違う新鮮な印象を受けました。
特に今回は舞台上に窓が付いた壁があり、窓に額縁をはめ込んで仕掛けがしてあったり、窓から手を出したり照明で照らしたり、壁に字幕を表示したり。壁によって小道具がより活かされたほか、各場面の雰囲気づくりにも活かされていたように思います。
DAZZLEの舞台に欠かせないナレーション。今回のナレーションは俳優・浅野忠信さん。浅野さんのナレーションが重い世界観をより鮮明に浮かび上がらせてくれて、映画を観ているような気がしました。
また、独裁者の子と教師のセリフもあって、浅野さんのナレーションに合わせてDAZZLEのメンバーが演技をするのも新鮮で見応えがありました。
ダンスについても奇妙なマスクを付けたまま踊る場面があって周りが見えなくて難しいんじゃなかろうかと思ったり、エンディングのダンスでは組体操的な?要素も入るなど圧巻のパフォーマンスでした。
その他、音楽・音響も素晴らしかったですし、稲光にはビビりましたし、旗に総統の顔が映し出されたところはため息が出ましたし、挙げるとキリがないですが、舞台上の表現に関わるあらゆる要素がより洗練され、より芸術的な舞台へ飛び抜けた印象です。
心のひだに触れるストーリー
重々しい世界観や鮮烈な表現にどうしても目が行ってしまいますが、ストーリー上の見どころは独裁者の子の葛藤です。
DAZZLEの作品を全部見たわけではありませんが、2つの対立する概念や対照的な場面を行ったり来たりすることを通して心のひだに触れるようなストーリーが多いような気がします。
今回のストーリーでは50歳になったら死んで「貢献」しなければならない制度を作った独裁者が50歳を迎えようとする中、独裁者の子が父との関係、「貢献」しなかった教師との関係で対立する概念を見せつけられ、やがて一国を預かる者として生かすか殺すかの究極の選択を迫られます。
結末についてはいろいろな解釈ができるような形になっているので一抹のモヤっと感が残りました。しかし、一抹のモヤっと感が残ることで想像する楽しみができて作品の芸術性が高まるというかもう一度観たくなるというか。
個人的な都合で初日しか見られなかったのですが、できればもう一度くらい観てみたかったです。
今後もスケールアップの予感
今回は公演を取り巻く環境も今までと違うものがありました。規模が大きい劇場での公演だったというのもそうですが、主催・製作として株式会社パルコが入ったことが大きいと思います。
本公演の特別サイトも立ち上がりましたし、公演前の1月には取材会が行われ、その模様が各メディアで配信されました(一部リンク切れしていますが特別サイト内のMEDIAのページに配信先がまとめられています)。
ちなみに特別サイト内のCOMMENT & MOVIEのページにDAZZLEメンバーのコメントムービーが掲載されているので興味のある方は見てみてください。あまり再生されてない感じなんでしょうか、これ?モッタイナイナー(´・ω・`)。
また、今回初めて公演プログラムが作成されていたので買ってみたのですが、ストーリーに記念写真だけみたいな薄っぺらなものではなく、出演者、スタッフの意気込みに対談が3本、インタビューに関係者メッセージなど盛りだくさんの内容で大変興味深かったです。
このような変化が全て良い方向へ働くのか分かりませんが、今までDAZZLEが自前でやっていた部分を外部の一流のプレーヤーに任せたり、DAZZLEが単独ではできなかったことができるようになったりするのかもしれません。
今後もDAZZLEの持つ特性、表現がより研ぎ澄まされクオリティの高い作品が観られることを期待したいです。
そのDAZZLEの今後の予定が公演プログラムに挟まっていたのですが、3月は津軽三味線奏者の上妻宏光さんとの再共演、5月は『ASTERISK』再演、8月は佐渡島で太鼓芸能集団 鼓童と共演、9月は東京国際フォーラム ホールCで『花ト囮』。
そして2015年3月には歌舞伎役者・坂東玉三郎さん演出の特別公演が予定されています。想像以上に壮大なスケジュールでどんな作品が見られるのか非常に楽しみです。
スケールアップしていくDAZZLEに今後も目が離せません!
参考: